まほろばの疾風(かぜ) (集英社文庫)



まほろばの疾風(かぜ) (集英社文庫)
まほろばの疾風(かぜ) (集英社文庫)

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目に見えぬ者

陸奥の敵は決して闘いに来ない朝廷だった。武士との闘いはお互いに尊敬し会うことが出来るけれども、権力者とはどこまで行っても理解し合うことが出来ないのだ。
アテルイは人間としての尊厳の中で生き抜いたのだろう。
だからこそ、自分を楯にすることが出来たのだ。
目に見えぬ者との闘い。これほど空しいものはない。
教師なら課題図書にしたいような

自治国家建国を夢見た男女達のアツい物語。北方謙三の南北朝ものなどに通ずるものがある。登場人物たちは皆清廉で、卑怯という言葉が最も似合わないような人たち。助ける必要のない敵を助けたり、現実的にはそこまでしないだろう、と思うような場面もあったが、そう思いながらも感動している自分がいた。最後が予想できてしまったのが残念だが、久々にアツくさせられた話だった。
私はこっち。

高橋克彦の「火怨」の後に読みました。
というか、「火怨」に不満が残ったのでこちらも読んでみた。

テーマは同じだけど全く違う話です。
それだけ文献が少ないのでしょうね、面白いなと思いました。
もしも私に文才があったら、アテルイの話を好きに書いてみたい(笑)

「火怨」で不満を感じた点が、この本ではリアルに描かれてます。
少年アテルイと人々の暮らし、文化。
前半は「そうそう、これこれ!これが読みたかったの!」
って感じでした。もともと蝦夷やアテルイについて知りたくて
探した本だったので、その意味では断然 熊谷さんの方が面白い。
熊谷さんの本は何冊か読んでますが、彼ならではの自然の描写がいいです。
「蝦夷の民」も「自然の一部」として繊細に描かれててさすが。

ただ、戦闘シーンになると、やはり「火怨」の方が迫力があって面白いと
言えるのかもしれない。。作者の得意なとこが出てるんでしょうか。
だからそのぶん、星1つ減らしましたw
でも、私も「アテルイの戦ぶり」が読みたいわけではなかったので
全然気にならないです。
むしろ「火怨」はドラマチックすぎて読んでて恥ずかしくなってくる^^;
熊谷作品のアテルイの方がナイーブで脆くて、そんなに強い男じゃなくて、
だからむしろ本当に強い。ああきっとこういう人だったんだろなあ、って
素直に思いました。
モレとのエピソードも素敵です。
山夷の誇りに感動

中学校の歴史の教科書には載っていなかったものの、副読本の年表には小さいフォントでつつましく載っていた「アテルイの乱」の物語です。実在した人物ではあるものの詳細不明だったアザマロやモレを、それぞれアテルイの父、隣村の大巫女と想定したことで、ダイナミックな時代小説ができあがりました。文庫本の厚さゆえ購入に躊躇したものの、ストーリーの展開がおもしろく、また、登場人物の矜持ある生き方に感動し、誰しもあっという間に読んでしまうことでしょう。表向きスマートな田村麻呂も朝廷内で相当苦労したはずだぞ。

アテルイは、母屋から離れたみすぼらしい小屋で、母が山に祈りつつ生まれたことから話が始まります。いかにも山(森)から生まれた子、と象徴づけたのでしょう。しかし、これはエミシのみでなく、血の穢れゆえ母屋での出産を斎みた、前近代の日本民俗では常套的な行為です。
他にも民俗学的なエピソードがふんだんに織り込まれていますが、柳田国男の「遠野物語」や「山の人生」、中西進らが明らかにした知見を参考にした割には・・・。また、東北、特にヤマセに襲われる岩手の農業は、戦前まではイネよりも雑穀が中心であり、文中に出てくる和賀ではほんとについ最近まで3年に1年はイネが育たないという有様でした(余談ですが1日に5合もの米を食べていた宮沢賢治はたいへんな贅沢者だ)。イネが不作なら急遽ソバを植えて飢えをしのいだそうです。フィクションと割り切ればこれらは瑣末なことですが、僕的には☆4つです。
「火炎」よりリアル

八世紀末の東北蝦夷対大和朝廷との闘い。この題材ではすでに高橋克彦の長編傑作「火炎」がある。ところが、同じアテルイを主人公にしながら、まったく違う小説になっている事にまず驚く。登場人物たちの性格、立場、性別どころか、住む環境、闘う動機付け、全て違っており、同じところを探すのが困難、というよりか、同じところは結局文献に残っている資料部分のみなのだろうと思えた。高橋の著作も非常によかったが、考古学が趣味の私にとっては、こっちのほうがよりリアルである。確かに、当時の蝦夷達の生活はアイヌ民族のそれとあまり変わらなかっただろう。だとすると、最初から東北連合国家があり、アテルイはその首長の息子であったとする高橋の著作には少し無理があっただろう。モレをアテルイの懐刀ではなく、いち村を統率する大巫女で、女性であるとしていて、話を面白くしている。アテルイの少年場面などは熊谷のアイヌ取材、北海道動物取材が活きた独壇場。想像部分と歴史的材料をうまくとりこんで、なかなか小説になり難い古代をうまく料理している。



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